川のせせらぎ、風の囁き



現在の時間、午後1時を過ぎたぐらい。そのため、太陽は真上からぎらぎらと輝き地上が白っぽく見えるほど照りつけるという、かなりハタ迷惑で激しい自己主張している。それも、当たり前だけど毎日必ず。
今日の正確な気温は何度だか知らないけれど、きっと今日もこの季節にぴったりな『真夏日』なんだろう。

(こないだの長雨が嘘みたい)

雲一つない青空に喜びと鬱陶しさをどっちつかずに感じながら、あたしは額の汗を拭った。

正面に流れる川ではあたしのポケモン達が楽しそうに遊んでいる。ここに来たのは、ポケモン達が暑さに参っているみたいだから川に行ったらどうかと、タケシに進められたからだ。もちろんみんなは大喜びで、全員水の中に入っている。
水の流れが速いところでは、ポッチャマとブイゼル、エテボースが競争中。ナエトルとムクバード、ヒコザルにウリムーはあたしのとなり、つまり川岸近くの木陰で涼んでて、ミミロルとパチリスとピカチュウは浅いところで楽しそうに水遊び。

(…楽しそうだなぁ)

なんとなくあたしも遊びたくなってきたので、川岸に腰掛け、足を投げ出すようにして水に浸してみる。想像以上の冷たさと、肌の上を水が流れていく感覚が伝わってきて思わず微笑んだ。

(気持ちいいー)

そのままちょっとだけ、足をばたつかせてみる。ちゃぷちゃぷ。ぱちゃぱちゃ。可愛らしい音を立てて水が跳ねる。
こうやって、川に入るのなんて何年ぶりだろう?小さいときは湖の周りで、ケンゴと一緒に遊んでたけど。
きらきらした懐かしい夏のことを思い出そうと、目を瞑った。しばらくそうして記憶の中を巡っていたけれど、突然ふっと頭上に影が掛かったのが分かって、ぱっと目を開いた。

「…何をしている」
「シ、シンジ!?」

見上げた先にあったのは、いつも通り仏頂面な少年の顔だった。黒い半袖のTシャツは汗のためか少し体に張り付いていて、よく見ると仏頂面の額にも汗がある。

「ここで涼んでるの。シンジも暑いんでしょ?川の水冷たくて気持ちいいよ」
「だからどうした」
「足をいれるだけでも全然違うわよ。ここ、木陰だし」

少しでも、一緒にいてくれたらいい。そんな思いを込めて言ってみる。しかしシンジは無表情のまま、鞄を降ろそうともしなかった。

「くだらん。俺は先に行く」

そういって、踵を返そうとしたシンジの顔に――勢いの付いた水流が直撃した。
その水量は結構あったようで、シンジは頭から肩のあたりまでぐっしょりと濡れてしまっている。
驚いて水の来た方向を振り向くと、ポッチャマがお腹を抱えて笑っていた。どうやら犯人はポッチャマ、らしい。

「ぶ…ッッ!!お前、何を…!」

シンジにギロリと睨みつけられても、ポッチャマは謝るそぶりも見せない。それどころか胸を張って、フンッと鼻で笑いさえした。
……明らかに挑発してる。

シンジの眉間に深い皺が刻まれた。そのときピキピキッと、何かにヒビが入るような、そんな音が聞こえた気がする。

「おい、お前…覚悟は出来てるんだろうな?」
「ポッチャ、ポチャポーチャ!」
「フン、後悔させてやる!エレキッド、あいつに――」

ボールから出されたエレキッドへの指示は途中で止まった。シンジが再び大量の水を掛けられたからだ。
けど、今度はポッチャマではなく――岸から立ち上がり、真正面から水を蹴り上げた、あたし。

「アンタ、バッカじゃないの!こんなところで電撃使ったらみんな感電しちゃうじゃない!」
「構うか!」
「構いなさいよこのバカッ!」
「このっ……!」

腕全体を使って水を掬いさらに掛けると、怒りの形相をしてシンジが川に入ってきた。同じように水を掬い、あたしに向かって掛けてくる。あたしも負けじと水を飛ばす。
口では喧嘩し、手足を使って水を掛け合って。そんな子供みたいなことを、あたしたちはかなり本気でやり合っている。時折頬を撫でていく風は、まだまだ子供ねと笑っているようにも思えた。









そして、数分後。
いつの間にか川の中心で、両極に別れたあたしとシンジはにらみ合う。



「…GO!」



次の瞬間。
互いのポケモンを総動員した、壮大な水掛合戦が開始された。

…覚えているのは、水の弾ける音ばかり。














それから、どのぐらい経ったのか。














「さて、お二人さん。楽しそうなところで悪いけど、そろそろポケモンセンターに戻ろうか?」



はっと気がついたときは、もう空が真っ赤に暮れていて。
呆然とするあたし達に、タケシはにっこりと微笑んで、籠いっぱいのタオルの山から厚手で大きなものを二枚、差し出したのだった。


テーマは、夏っぽく子供っぽい2人+お兄さんなタケシ。
後半らへんは書いててものっそい楽しかったです(笑)



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